舞台に立っていた時、けっしてやってはいけない事がいくつかあった。
その一つが、スキーだった。
怪我をしては舞台にあなを空けるからだ。しかし・・・・・
大学時代はあっちこっちに出かけていた。
長野県信濃町に黒姫山がある。友人の親戚がペンションを経営していた。
ゲレンデから直接滑ってこれるほど近い。
劇団を退団した年の冬は、ずっとそこに籠っていた。
車で10分ほど下山して行くと、野尻湖がある。
当時は、水上スキーやウィンドサーフィンが流行していた。
たしか・・・ マンモス?かなにかの・・・ナウマン象だったかなぁ・・・
化石の発掘がさかんで、子供達が夏休みの宿題にと沢山集まってきていた。
夏は水上スキー、冬はスキーとスノーモビル。
ペンションのオヤジにでもなって、楽しく過ごそうなんて呑気な事を考えていた。
とりあえず・・・
水上スキーをするためには、小型船舶の免許がいる。
送迎バスを運転するには、大型の運転免許がいる。
両方取得することにした。ところが・・・・・
自分でペンションを経営していくためには、その他にもいろいろ取得しなければいけない事が・・・
衛生管理者~とか、危険物取扱~とか・・・しかし一番悩んだのは、調理師免許だった。
調理師免許以外は勉強すればなんとかなりそうだったのだが、
調理師免許はたしか・・・三年以上の経験が必要で、推薦状も必要だった。
勿論会社も興さなくてはならないし、経理の知識も必要だし、私には未知の世界だった。
友人に相談した時、友人のおやじさんが一言。
「お役者(私の愛称)、第二の人生だって。三十年早いわ!!! だいたい第二の人生って
サラリーマンが四十年近く勤めて、定年間近に考えることだぞ。ペンションのオヤジ?
おめぇまだ三十前だろ。ちゃんと働け、ちゃんと。」
ごもっとも。
あれから二十五年が過ぎた。
本来ならそろそろ第二の人生を考える年齢なのだが・・・・・
もう方向転換する気持ちはさらさらない。
86,7になった友人のオヤジさん。今年の五月にひさびさにお会いした。
「お役者よ、今度いつ舞台出るんだ。東京でなら見にいくぞ。」と。
今なら、スキーが思いっきりできますね。
広瀬さんには、ずーっと舞台の世界で生きていてほしいです。
その姿が、私の憧れの広瀬さんだったから。
もう、お会いすることはできませんが、遠くからいつも応援しています。