私たちの仕事場は、劇場。
どんな職業にもしてはならない事がある。タブーとでもいうか・・・・・
ある作品の舞台稽古の時だった。私はいつものようにメークを済ませると、早めに袖にいった。
自分の歌をかるく口ずさんでいた。ハミングだったかもしれない。すると・・・
「バカヤロー 口笛ふくんじぁねぇ!!!!!!!」
突然怒鳴られた。
振り返ると、職人気質の舞台監督さんだった。
すると、大先輩がニヤニヤしながら手招きで私を呼んでいた。
「お前ハミングしてただろう。それが口笛吹いてると思われたんだよ。」
「???????」
「今はあんまり関係ないんだけどな・・・」
内容はこうである。
「今はスタッフの舞台転換などはインカムを使うけどな、そんなものがない時代はな、
舞台監督の口笛が合図だったんだ。相当昔の話しだけどな、だから以来舞台袖での
口笛はタブーなんだよ。」と。
劇場でのタブー、迷信、ゲン担ぎの話しを聞いた事がある。確か・・・
「マクベス」以外の作品に出ている時には、「マクベス」の話しはしてはいけないとか。
そのカンパニーに不幸が起こるらしい。間違って口にしてしまったら、急いで劇場を飛び出し
ドアの外で大声を出して、誰かがドアを開けてくれるまで待ってなくてはならないらしい。
本番中にもこんなことがあった。
舞台上で突然、本当に突然なんの前ぶりもなく先輩が私のほうにやって来て、
私の首を抱えこみ(ヘッドロックのように)耳元で囁いた。
「上をむくな!」
私をちがうポジションに引っ張っていき、何食わぬ顔で芝居をつづけた。
「???????」
一幕終了後急いで聞きにいった。
「あのぉ~ さっき何かまずい事しましたか?」
「あ、あれか。お前聞こえなかったか?」
「???」
「頭上でパ~ンって音。」
「???」
「水銀灯が割れた音だよ。水銀灯が割れるとな、細かいガラスの破片がヒラヒラ降ってくるんだ。
その時上を向いてるとな、目にその細かいガラスの破片が入って大変なことになるんだ。
大丈夫だったか?」 なるほど。感謝。
現在の照明機材には水銀灯は使用されていない。
舞台経験とは、いろんなことを意味するんだなぁと思った。
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