今から四十年前父が「家を建てる。一度その土地を見に行こう。」と。
母のオンボロ車で出かける事にした。西宮と芦屋の境で、少々高台にあるらしい。
「もうすぐだ。」
車が坂を上りかけた。閑静な住宅が建ち並んでいる。
坂道の行き止まりが・・・ そこには神社があった。越木岩神社。
「その横のじゃり道をあがるんだ。」と父。
家が一軒も建ってない。昼間なのになんだか薄暗い道。そしてふた筋めに・・・
「そこ、そこや。」
三叉路の角の土地?というより草ぼうぼうの荒れ地だった。母が一言。
「此処どこ?」
帰りの車中は、母の質問の嵐。
「水道は通ってんの? 一番近い駅まで何分? 買い物は何処ですんのん? 電話線は?・・・」
そして・・・
「ガスは?」 それまでなんでも丁寧に答えていた父がぼそっと。
「プロパンや。」すかさず母が、「絶対嫌!」
数ヵ月後の春、地鎮祭のために再度行くことになった。
オンボロの車が坂道にさしかかった時、母が声をあげた。
「うわぁ~きれい!」
道の両側に満開の桜。まさに、桜並木だ。
あれから40回もこの風景を見てきた。まもなくまた桜が咲く。
家の周りも賑やかになってきた。
41回目の桜並木は・・・ひさしぶりにゆっくり歩いてみようと思う。
桜が決め手になったのですね。
絵本の世界に出てきそうなエピソードですね。