ボツ企画Ⅱ

プロデューサーとして最初の仕事は、演劇集団「円」の「欲望という名の電車」公演だった。
主演は、岸田今日子さん。
岸田さんのお父さんは、劇作家で文学座の創立者の一人だ。
岸田さんは当時から不思議な感性の持ち主で、どこか物悲しく思えた。
三島由紀夫さんの演出で、「サロメ」の主演をされている。ずいぶんと昔の事だが、ぜひ見たかった。
若い世代の人達には、アニメ「ムーミン」の声と言った方が分かりやすいかも。
 
劇場のプロデューサーの仕事は、大きく分けて二つある。
作品そのものを交渉して、買い取り、興業する。もう一つは、ゼロから企画・立案して、興業する。
どちらも二年以上前から準備に入る。
何本か買い取り公演を進めながら、いつかは自分の企画作品をと考えていた。
日本の演劇界老舗 文学座の公演を担当したのだから、どうせなら・・と考えた。
ミュージカルがやりたくてこの世界に飛び込んだのだから、ミュージカルの原点のような・・・
 
インターネットなどない時代だったので、文献を探し歴史を辿ってみた。
どんな世界にも、父や母と呼ばれる人がいる。ミュージカルの世界にもいるはずだと・・・
「ジョージ・M・コーハン」 「ブロードウェイミュージカルの父」と。
一度ブロードウエイに行ったときに、確か銅像があった気がする。
「よし、これでいこう」
彼の人生を描いた映画、「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」を早速見てみた。感想は・・・
「この作品の舞台化は大変だ。」
しかしその時すでに、「ジョージ ・M・コーハン」なる作品があった。
原本をとりよせ、知り合いに翻訳をお願いした。
とにかく公演に向けて準備に入った。予算を組み、キャスト、スタッフの人選をし、宣伝、広告、営業戦略・・・
 
やっと今日の本題に。
 
公演まで一年を切った時期に・・・同じ時期に対抗馬があらわれた。その企画書を見て、唖然とした。
「勝てない」
興業が成功するか否かは、残念だが「キャストの知名度」が大きく左右する。
私の企画作品も、ある程度知名度があったが、当時から生意気にも「実力重視」を優先させていた。
対抗馬の主演は・・・実力、知名度、くわえて 「品格」まで備わった方だったのだ。
頑張るだけ頑張ったが・・・結果は当然わかっていた。私の企画は先送りになった。
ボツになった企画は山ほどある。いつか再チャレンジしようと思っていると。
 
えっ 対抗馬の主演?  ・・・ Mたか子さんのお父上。 納得。
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